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株式、株券についての主な改正点について

新会社法のうち「株式」および「株券」について、主な改正項目について解説します。

I.株式の譲渡制限について

株式は、原則として自由に売買や贈与できます。ただし、定款で、売買や贈与をする際には、その会社の承認を要することを定めることができ、多くの会社はこの規定を定款で定めています。この株式の譲渡制限についての主な改正は、次のとおりです。

株式の譲渡制限の付け方

(現商法) 発行する株式の全部について譲渡の承認を要するか、要しないかのいずれかの選択となります(商法204条)。
【新会社法】 会社法施行後は、後述のIV.のように複数の種類株式を発行することができます。このように種類株式を発行する場合に、株式の種類ごとに譲渡制限を付することが可能となりました(会社法108条)。
<公開会社と株式譲渡制限会社>
公開会社とは: 発行する全部又は一部の株式について、譲渡制限を設けていない会社をいいます(会社法2条)。
株式譲渡制限会社とは: 発行する全部の株式について、譲渡制限を設けている会社をいいます(この用語は以下の説明で便宜的に使用しますが、法律用語としては、「公開会社でない」会社といいます)。

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譲渡制限の承認機関

(現商法) すべて取締役会で承認します(商法204条)。
【新会社法】 原則として、取締役会を設置しない会社(注)は株主総会、取締役会設置会社は取締役会が承認します(会社法139条)。
ただし、定款で別に定めることができます。したがって、取締役会設置会社が株主総会を承認機関としたり、代表取締役に承認を委ねることもできます。
(注)新会社法では、取締役会を設けないこともできるようになりました(会社法326条)。

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譲渡の承認について

(現商法) 譲渡制限株式を譲渡する場合は、すべて承認が必要です(商法204、204条ノ2)。
【新会社法】 原則は、すべて承認が必要です。ただし、定款で次のように定めることもできます(会社法139、140条)。
  1. (1)株主間の譲渡については承認を要しないこと
  2. (2)役員や社員など特定の属性を有する者に対し譲渡する場合は、承認権限を代表取締役等に委任する、又は承認を要しないこと
  3. (3)譲渡を承認しない場合で承認請求者が請求する場合は、買受け人をあらかじめ定款で定めておくこと

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株主平等原則の例外規定の創設について

株主は、出資した株式数(割合)に応じて、「剰余金の配当を受ける権利」、「残余財産の分配を受ける権利」、「株主総会における議決権」を有しており、これを「株主平等の原則」といいます。株式譲渡制限会社の場合、定款で定めることにより、これらの権利を株主ごとに異なる取扱いを行うことができるようになりました(会社法109条)。
したがって、「株式数にかかわらず、1人1議決権とする」、「株式数によらないで株主全員が同額配当とする」ことも可能です。
この定款変更は、特別決議より重い特殊決議(総株主の半数以上であって、総株主議決権の4分の3以上の多数にあたる決議)によります(会社法309条)。
ただし、本件についての税務執行上の取扱いが現状未定であり、具体的に実施する場合には慎重に対応する必要があります。

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II.自己株式の取得について

株主から自己株式として有償で取得することは、株主に対する金銭等の分配(利益の配当、中間配当、資本および準備金の減少に伴う払戻し)と同じく、いずれも実質的な会社財産の払戻しにあたります。したがって、会社法では、「剰余金の分配」として共通のルール(会社財産の払戻しに対する財源規制)で整理されました(注)。

  • (注)なお、(1)事業全部の譲受け、合併、吸収分割に伴い相手方の会社が保有する自己株式を取得する場合や (2)合併、分割、株式交換、株式移転、事業譲渡および事業譲受けの際の反対株主の買取請求に応じて買受ける場合など、やむを得ず自己株式を取得する場合は、財源規制は課されません。

取得についての株主総会決議の時期

(現商法) 自己株式の取得は、一部の例外を除き、利益処分の一環として定時総会で決議されます(商法210条)。
【新会社法】 利益処分が定時総会だけでなく、臨時総会でもできるようになりました(会社法156条)。

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譲渡取得方法(取得の対象者)

不特定株主からの取得(ミニTOB方式)が新設されました(会社法156〜159条)。
具体的には、株主総会で、取得する株式の数、取得対価の総額と取得期間を、普通決議で定めます。この総会決議を受けて、取締役会(または取締役)が具体的に取得方法を決定し、株主に通知または公告し、譲渡の申し込みをした株主から株式を有償で取得します。この場合、申込総数が予定していた取得総数を超えるときは、案分比例となります。

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相続人・合併会社からの取得

(現商法) 相続や合併など一般承継によって株式を取得した場合は、一般承継人は権利義務を当然に承継するため、株式に譲渡制限がある場合でもその株式は譲渡承認の対象とならず、一般承継人が取得します。
【新会社法】

一般承継人に対して、会社がその株式の売渡を請求できる旨を定款に規定することができることとされました。これにより、相続や合併により会社にとって好ましくない者が株式を取得することを排除することができることとなりました(会社法174〜177条、162条)。
なお、この規定は、譲渡制限株式についての特則です。したがって、公開会社であっても譲渡制限株式については、定款でこの定めをおくことができます。

主な具体的手続きとしては、

  • (注)この項目は中小企業団体等からの強い要請で創設されました。ただし、この規定を定款で定めておいても、実際に買取請求を行なう場合は、裁判所の価格決定や税法の対応動向を見極めたうえで慎重に行うことが大切です。

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III.新株発行または自己株式の処分(募集株式の発行等)

新株発行と自己株式の処分は、いずれも会社の資金調達手段であり、会社法では、募集株式の発行等として手続きを統合しました。以下で、募集株式の発行等について主な改正点について解説します。

譲渡制限株式の第三者割当増資(有利発行)の手続き

(現商法) 第三者割当増資と時価以下で発行する有利発行とはそれぞれ別の決議(特別決議)が必要です(商法280条ノ2、280条ノ5ノ2)。
【新会社法】 会社が株主以外の者に対して特に有利な価額で、新株の発行又は自己株式の処分を行う場合には、第三者に対する発行決議と有利発行の決議を特別決議により一度で行うことができるようになりました(会社法199、200、309条)。

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貸付金の現物出資(DES)

(現商法) 債権額が500万円以下の少額または弁護士等の専門家の証明がある場合を除き、検査役の調査が必要です(商法173条、280条ノ8)。
【新会社法】 金銭債権の履行期が到来しており(注)、債権額以下で出資する場合は、金額の多少を問わず検査役の調査は不要となりました(会社法207条)。
  • (注)債務者である会社が期限の利益を放棄すれば、履行期は、いつでも到来します。

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IV.種類株式の発行

会社法では、次に掲げる事項について内容の異なる種類株式を発行することができます(会社法108条)。なお、次のc、d、eについては、発行している全部の株式について、それぞれ譲渡制限株式、取得請求権付株式または取得条項付株式とすることができます(会社法 107条)。

<種類株式の内容>
株式の呼称 異なる定めの内容
a 優先株式、劣後株式 剰余金の配当
残余財産の分配
b 議決権制限株式 議決権を行使することができる事項
c 譲渡制限株式 譲渡によるその種類の株式の取得について、その株式会社の承認を要すること
d 取得請求権付株式 その種類の株式について,株主がその株式会社に対してその取得を請求することができること
e 取得条項付株式 その種類の株式について、その株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること
f 全部取得条項付種類株式 その種類の株式について、その株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること
g 拒否権付種類株式
(「黄金株」)
株主総会(取締役会設置会社の場合は、株主総会または取締役会)において決議すべき事項のうち、その決議のほか、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの
h 役員選任権付種類株式 その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任すること
(注意事項)
  1. 1.aの優先株式・劣後株式において、「剰余金の配当を受ける権利」および「残余財産の分配を受ける権利」の全部を与えない旨を定款で定めることはできません。(会社法105条)
  2. 2.hの役員選任権付種類株式については、委員会設置会社および公開会社はこの株式を発行できません。(会社法108条)
  3. 3.bの議決権制限株式について、公開会社では発行総額に限度があり、発行済み株式総数の2分の1以下とされますが、株式譲渡制限会社ではこの限度がありません。(会社法115条)

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V.株券の発行と名義変更手続き

株券発行に対する原則が逆転しました。これにより、株券を発行していない会社の株主の名義変更手続きが改定されました。

株券の発行

(現商法) 株券は、発行することが原則です。ただし、定款で株券を発行しないことを定めることができます。この規定を設けた会社を株券廃止会社といいます。なお、株式譲渡制限会社は、株券廃止会社でなくても、株主から請求があるまでは株券を発行しなくてよいことになっています(商法226、227条)。
【新会社法】 株券は、不発行が原則となりました。定款に定めがある場合のみ、株券を発行できます。この規定を設けた会社を株券発行会社といいます。株式譲渡制限会社は、株券発行会社であっても、株主から請求があるまでは、株券を発行しなくてよいことになっています(会社法214、 215条)(注)。
(注)現行の株券廃止会社でない会社(定款に、株券を発行しない旨の定めがない会社)は、会社法の施行後においては、株券発行会社(定款に、株券を発行する旨の定めがある会社)とみなされます。(整備法76条)

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名義変更手続き

(現商法) 株式の譲渡については、株券廃止会社を除いて株券の引渡しが必須とされているため、名義書換は株式取得者が株券を添えて申し込みます(商法205条ほか)。
【新会社法】 株券不発行が原則となるため、「株券発行会社が発行した株式取得者が株券を提示して請求する場合」および「相続人が相続により株式を取得した場合で相続により取得したことを証する書類を提示した場合」など特定の場合を除いて、名義書換については、株主名簿記載者と株式取得者が共同して請求しなければなりません(会社法133条)。

(相談部 宮澤正彦)

[TAX AND LAW情報(2006年3月27日発行)より転載]

内容は執筆当時のままとなっておりますのでご了承ください。

  • *本ホームページの情報は、法律、会計、税務等の一般的なご説明をしたものです。個別具体的な法律上、会計上、税務上等の判断や対策などについては専門家(弁護士、公認会計士、税理士等)にご相談ください。
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