従業員を海外に送り出す企業の皆様から、海外勤務者の給与に関する問い合わせが数多く寄せられます。そこで今回は特に問い合わせの多い、海外勤務者の給与に対する源泉徴収の取扱いについて解説します。
税法上日本を1年以上の予定で離れる場合は、日本を出国した日の翌日から日本の「非居住者」となります。また、海外での勤務期間が1年未満の予定の場合は「居住者」扱いとなります。
この「居住者」「非居住者」であるかどうかで、日本での課税所得の範囲と課税方法が異なってくることから海外勤務者をめぐる税務においてはこの判定が最も重要なポイントとなります。

所得税基本通達(212−3)で「給与等の計算期間の中途において居住者から非居住者となった者に支払うその非居住者となった日以後に支給期の到来する当該計算期間の給与等のうち、当該計算期間が1月以下であるものについては、その給与等の全額がその者の国内において行った勤務に対応するものである場合を除き、その総額を国内源泉所得に該当しないものとして差し支えない。」と規定されています。従って、非居住者に該当する場合については、出国後最初に支払う給与については非課税となります。

この場合6月21日に支給される給与については非課税となります。

この場合6月21日に支給される給与は全額国内において行った勤務に対応するものですから、全額が課税対象となり20%で源泉徴収する必要があります(源泉徴収により課税は完結し、年末調整の必要はありません)。
出国後最初に支払う賞与については、上記通達の「当該計算期間が1月以下であるもの」に該当しませんので、賞与計算期間において出国時を境に国内源泉所得と国外源泉所得に按分して、国内源泉所得(賞与計算開始日〜出国日)に対応する部分について20%の税率により源泉徴収する必要があります。給与の場合と同様に源泉徴収により課税は完結し、年末調整の必要はありません。

この場合は国内勤務に対応する4月1日〜6月20日(81日)分を按分(81日/183日)計算し20%の税率で源泉徴収します。
日本を1年以上の予定で離れる場合は、日本を出国した日の翌日から日本の「非居住者」となりますので出国時に年末調整をしておく必要があります。年末調整の対象期間は出国する年の1月1日から出国の日までです。この場合の所得控除についての取扱いは以下のように取り扱われます。

給与が海外勤務に係るものである場合には、日本では非課税扱いとなります。したがって日本国内で支払われる留守宅手当等についても日本での課税を受けません。
しかし、海外支店などに勤務する日本の法人の役員の受け取る給与については別の取扱いをします。これらの給与は、日本国内で生じたものとして、支払を受ける際に20%の税率で日本の所得税が源泉徴収されます。ただし、この役員には取締役支店長など使用人として常時勤務している役員は含まれませんので、一般の使用人と同様の取り扱いとなります。
海外勤務者が帰国した場合は帰国の日からは居住者として扱われます。居住者は全世界所得が課税の対象ですから帰国後最初に支払われる給与については、給与計算期間に国外勤務があってもその全額が課税の対象となります。出国時の取り扱いと異なりますので注意してください。

この場合5月1日〜5月20日までは国外勤務となりますが、給与支給日には居住者ですので6月21日に支給される給与は全額課税対象となります。
帰国後最初に支払われる賞与についても、支給時は居住者として扱われますので、帰国後最初に支払われる給与と同様に全額が課税の対象となります。
これは国内源泉所得と国外源泉所得とを按分して計算する出国時の取扱いと異なりますので、注意が必要です。

この場合賞与計算期間のすべてが国外勤務となっていますが、賞与支給日には居住者ですので、12月10日に支給される賞与は全額課税対象となります。
当初1年以上の予定で日本を出国したものの、その後の事情により出国期間が1年未満となった場合の取扱いについては、あくまで居住者、非居住者の判定は出国時の海外での勤務予定期間によります。従って、海外勤務期間は非居住者というと取扱いに変更はなく、遡って居住者扱いに訂正する必要はありません。

逆に当初1年未満の予定で出国したものの、その後の事情により出国期間が1年超となった場合の取扱いについては、1年以上勤務することが明らかになった時点で「非居住者」としての取扱いに変更することになります。従って、海外勤務期間は居住者という取扱いに変更はなく、遡って非居住者扱いに訂正する必要はありません。

(相談部 花野 稔)
[TAX AND LAW情報(2008年2月18日発行)より転載]
内容は執筆当時のままとなっておりますのでご了承ください。